2023年7月、福井県の海水浴場にイルカが出没し複数の人が負傷する事態になっています。
なぜこのイルカは海水浴客を攻撃するのか?
この記事では行動分析学の観点からイルカの行動を考えてみたいと思います。
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ヒトや動物の行動の原因を解明し、行動に法則を見出すことを目的とした心理学のひとつ。
医療や介護、スポーツ、ビジネス、教育、家庭など様々な場面で応用されています。
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ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。
対象行動を考える
行動分析をする時にはまず、対象行動をはっきりとさせましょう。
今回の場合は「人への激突」や「人を噛む」です。
この記事ではわかりやすいように「攻撃行動」とします。(イルカに攻撃の意志があるかどうかはわかりませんが)
負傷者が複数人いるということですから、この攻撃行動は何度も起きている…
つまり強化されているといえます。
強化
行動の生起瀕度が増加すること
攻撃行動は強化されている
イルカの海水浴客への攻撃行動が繰り返されているため、攻撃行動は強化されていると考えられます。
強化には「正の強化」と「負の強化」あります。
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それでは分析していきましょう。
好子出現による正の強化
攻撃行動の後に好子が出現しているパターンです。
好子
その個体が好きなものや出来事
今回の場合
①人のリアクション
②(イルカ自身の)体や口内への接触刺激
③餌(魚)
などが好子として作用していると考えられます。
人のリアクション
人のリアクションがこの個体にとって好子として作用している可能性があります。
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人がびっくりして逃げ惑うのおもろw
随伴性は以下のようになります。
随伴性
「○○したら△△が起きる」という環境と行動との関係
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この場合は攻撃されてもノーリアクションを貫けば、攻撃行動は消去の手続きを経てなくなります。
(イルカ自身の)体や口内への接触刺激
イルカ自身の体や口内への接触刺激が好子として作用している可能性があります。
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人にぶつかったら気持ちいいわ!
噛み心地も良し♪
随伴性は以下のようになります。
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このような行動を「自己刺激行動」や「自己強化」といいます。
感覚性好子によって強化されていることが多いので、なかなか介入が大変です。
餌(魚)
餌が好子として作用している可能性があります。
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人に攻撃したら餌が出てくるぞ!
随伴性は以下のようになります。
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イルカは主に魚を捕食してますので、海水浴客が生きた魚を持っているとは考えづらいです。
しかし、人影からたまたま魚が出てきたという可能性はあります。
嫌子消失による負の強化
続いては行動の後に嫌子が消失している場合です。
嫌子
その個体が嫌なものや出来事
今回の場合、人が近くにいるということ嫌子として作用しているというのが考えられます。
随伴性は以下のようになります。
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この場合、人への恐怖や嫌悪感によって人が嫌子になっていると考えられますが、人が嫌子であるならそもそもこの海水浴場にイルカが姿を現すことは無いと思います。
まとめ
ちょっと考えただけでもイルカの攻撃行動の随伴性のパターンがいくつか思いつきますが、僕としては人のリアクションによる強化が有力かなと考えています。
しかし、この個体も初めから強い攻撃行動をしていたわけではないと思います。
人が興味本位でイルカに近づき、触ったりするスキンシップの中で生まれた行動だと思います。
つまり、攻撃行動を引き出したのは人間です。
初めのうちは「かわいいかわいい」と何も考えずに動物と接したものが、危害を加えるようになったので今は「危険だ追い払え」となっています。
我々人間は動物に対する接し方を考えなければいけませんね。
今回はいま話題の「福井県の海水浴場に出没したイルカの攻撃行動」を行動分析学の観点から考えてみました。
レッテル貼りをせずに行動の随伴性を考えれば真実が見えてくるかもしれません。
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