行動分析学の視点から考える|野生動物への餌やりが招く危険性

行動分析学・動物
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近年、猿やシカなどの野生動物が市街地に出没したというニュースをよく見かけます。

可愛らしい姿に心を奪われ、つい餌を与えたくなる気持ちも分かります。

しかし、野生動物への餌やりは、一見優しい行為のように思えても、動物自身や人間社会にもたらす悪影響が大きいのです。

今回は、行動分析学という視点から「なぜ野生動物に餌を与えてはいけないのか」その理由と対策につ

いて解説していきます。

ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。

行動分析学とは

ヒトや動物の行動の原因を解明し、行動に法則を見出すことを目的とした心理学のひとつ。
医療や介護、スポーツ、ビジネス、教育、家庭など様々な場面で応用されています。

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餌やりは人間への接近行動を強化する

なぜ野生動物に餌を与えてはいけないのか…

一番大きな理由は、「人間に接近する」という行動を強化してしまうからです。

行動は、その直後になにが起こったかでその後の出現頻度が変わります。

野生動物に餌をあげるということは

人間がいる(先行条件)
 ↓
接近(行動)
 ↓
餌(結果:好子)

という随伴性になります。

好子:その個体にとって好きなもの、出来事
随伴性:「○○したら△△が起きる」という環境と行動との関係。環境とはその行動を取り巻くすべての事象のこと。

これは好子出現による正の強化という手続きになります。

餌をもらう経験をした動物は、今後人を見つけるたびに、接近していくようになるでしょう。

餌をねだって近づいてくる動物ってかわいいですよね!

ですが、この接近という行動が、動物と人間とのトラブルにつながっていくのです…

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「人間への接近」が違う行動へと変化する

誰しもが常に動物の餌となるような食べ物を持っているわけではありません。

動物が餌をねだって近づいて来ても、人間が餌を持っていない場合、動物はどうするでしょう?

あっさり諦めると思いますか?

答えはNOです。

随伴性は以下のようになります。

人間がいる(先行条件)
 ↓
接近(行動)
 ↓
餌無し(結果:行動前と変化なし)

となります。

これは行動の前後で環境の変化がないので、消去という手続きになります。

消去とは

行動が起こらなくなっていく手続きのこと

消去とは、行動が起こらなくなっていく手続きのことですが、行動がすんなり消去されるということは、ほとんどの場合、ありません。

どういうことかというと…

人間に接近したにもかかわらず餌がもらえなかった場合、すぐに引き下がるということはなくて、周りをうろうろしたり、さらに近づいてきたり、場合によっては突いたり噛んだりしてきます。

このように、消去の手続きを開始した直後に、行動の強度やレパートリーが一時的に増える現象を「消去バースト」といいます。

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人間がけがをする直接的な被害もありますし、人間の生活圏をうろうろしているうちに、農作物被害などを出すということも考えられます。

人間への接近行動が次第に変化していき、取り返しのつかない事態まで発展していくのです。

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ふと野生動物に遭遇してしまったら?

もし、野生動物に遭遇してしまったら、以下の点に注意しましょう。

  • 絶対に近づかない: 遠くから観察し、静かにその場を離れましょう。
  • 餌を与えない: 餌を与えることは、動物を危険にさらすだけでなく、あなた自身も危険にさらされる可能性があります。
  • 自治体への連絡: 野生動物の出没情報については、地域の自治体に連絡しましょう。

カラスや野良猫への餌やりもNG!

これまで解説してきた通り、カラスや野良猫といった、身近な動物への餌やりも同様の問題を引き起こします。

小さい動物だから、普段見慣れている動物だから、と餌やりをしていると大変なことになります。

よく近隣トラブルに発展していますよね…

まとめ

野生動物への餌やりは、一見優しい行為のように思えますが、動物自身や人間社会にもたらす悪影響が非常に大きいのです。

野生動物は、本来自然の中で生きていくべき存在です。

私たち人間は、野生動物との共存を考え、餌やりはやめ、適切な距離を保つように心がけましょう。

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