「優しかった母が、急に教義の話ばかりするようになった」
「父が老後の資金をすべて寄付してしまった」
大切な家族が宗教にのめり込む姿を見るのは、身を引き裂かれるような思いですよね。
必死に説得しても、喧嘩になるばかり。なぜ、こちらの言葉は届かないのでしょうか?
実は、宗教にハマるメカニズムは「意志の強さ」ではなく、「行動と環境の設計」の問題です。
行動分析学の視点から、その正体と、家族としてどう向き合うべきかのヒントを解説します。
ヒトや動物の行動の原因を解明し、行動に法則を見出すことを目的とした心理学のひとつ。
医療や介護、スポーツ、ビジネス、教育、家庭など様々な場面で応用されています。

ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。
なぜ「正論」で説得しても逆効果なのか?(弱化の原理)
家族としてまずやりがちなのが「そんなのおかしい!」「目を覚まして!」という否定です。
しかし、これが事態を悪化させます。
- 「弱化」による拒絶: 教団を否定することは、本人にとって「自分の居場所」や「心の支え」を攻撃される嫌悪刺激です。
- 行動の隠蔽: 否定され続けると、本人は「家族には本当のことを言う」という行動をしなくなります。結果として、より教団との結びつきを強め、密室化が進んでしまいます。
おすすめの1冊:『行動分析学入門』 まずはこの一冊から。なぜ人がその行動をとるのか?という疑問に対し、科学的な答えをくれるバイブルです。家族の不可解な行動を「感情」ではなく「仕組み」として捉えられるようになります。
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教団が提供する「報酬」の正体(正の強化)
人は、自分にとって「良いこと(強化子)」があるからその行動を繰り返します。教団は、家庭や社会で不足している報酬をピンポイントで提供しています。
- 社会的承認: 「あなたはそのままで素晴らしい」という全肯定。
- 明確な役割: 「この徳を積めば救われる」というシンプルなルール設定。
- コミュニティ: 孤独を埋める密な人間関係。
これらは行動分析学でいう「正の強化」です。
外の世界(家庭)で否定され、教団内で褒められれば、どちらに足が向くかは明白です。
おすすめの1冊:『メリットの法則』 「人は自分にとってメリットがあるからその行動をする」という極めてシンプルな法則を、身近な例で解説しています。家族が教団から得ている「メリット」の正体を見抜くヒントが詰まっています。
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「いつか救われる」という依存のループ(変動比率強化スケジュール)
「なぜあんなにお金を使い続けるの?」という疑問の答えは、ギャンブル依存と同じ仕組みにあります。
- たまに起こる「良いこと」: たまたま体調が良くなった、臨時収入があった。これらを教義と結びつけ、「たまに報酬がもらえる」状態を作ります。
- 消去に対する抵抗: 「たまに」報酬が出る環境(変動比率強化スケジュール)は、最も行動がやめにくいスケジュールです。一度ハマると、しばらく良いことがなくても「次こそは」「いつかは」と行動を継続してしまいます。
家族にできる「唯一の戦略」:代替行動の提示
行動分析学では、ある行動をやめさせるために、それに代わる「代替行動分化強化」をすることを推奨します。
代替行動分化強化(DRA)とは?
簡単に言うと、「困った行動(宗教活動)」が持つ機能(自己肯定や安心感など)を持った他の「望ましい行動(家事、趣味、家族団らん)」を徹底的に褒めて、強化することです。
- 否定せず、ただ聴く: まずは「話しても攻撃されない環境」を作り、家庭内の嫌悪刺激を取り除きます。
- 宗教以外の「報酬」を作る: 趣味、孫の世話、散歩など、宗教以外の行動に対して「感謝」や「賞賛」を送り、そこから得られる報酬を増やします。
- 専門家との連携: 個人の力で「環境(随伴性)」を変えるには限界があります。カウンセラーや弁護士など、第三者の介入を検討してください。
おすすめの1冊:『行動分析学で社員のやる気を引き出す方法』 タイトルはビジネス書ですが、中身は「望ましい行動をどう増やすか」の究極の実践ガイドです。家族を「否定」するのではなく、別の行動へ「誘導」するための具体的な声掛けやタイミングが学べます。
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最後に:あなたは一人ではありません
家族が宗教にハマるのは、あなたの愛情が足りなかったからではありません。
相手は「行動の科学」を巧みに利用するシステムのなかにいるのです。
まずはあなた自身が冷静になり、相手をコントロールしようとする手を一度緩めることから始まります。
おすすめ書籍:『マインド・コントロール』〜正体を知り、身を守る方法〜
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