こんにちは!ケンさんです。
学習理論の基礎中の基礎である「レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)」を学び始めたみなさん、こんな疑問にぶつかっていませんか?
「中性刺激(NS)と条件刺激(CS)って、どう違うの?」
「教科書に『無条件刺激と条件刺激を対提示する』って書いてあるけど、それって正しいの?」
今回は、そんな皆さんのモヤモヤをスッキリさせるためのブログ記事です。
行動分析学の用語の正しい理解は、今後の学習の土台になりますから、ここでしっかり押さえておきましょう!

ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。
まずは基本の「き」:レスポンデント条件付けとは?
レスポンデント条件付けとは、特定の刺激と別の刺激がセットで繰り返し提示されることによって、ある刺激に対して特定の反応が引き起こされるようになる学習のことです。
有名なのは、パブロフの犬の実験ですね。
この条件付けには、いくつかの重要な刺激と反応が登場します。
- 無条件刺激(Unconditioned Stimulus: US)
- 何の学習もなしに、生まれつき(あるいは経験的に)特定の反応を引き起こす刺激。
- 例:パブロフの犬における肉
- 無条件反応(Unconditioned Response: UR)
- 無条件刺激によって引き起こされる、自然な反応。
- 例:肉を見たときの唾液分泌(犬は肉を見ると自然に唾液を分泌しますよね)
これらは「無条件」という名前の通り、学習を必要としない「生まれつき」のセットだと考えてください。
中性刺激(NS)と条件刺激(CS)の決定的な違い
ここが本日のメインテーマです!
中性刺激(Neutral Stimulus: NS)って何?
中性刺激とは、反応を引き起こさない刺激のことです。
つまり、動物にとって「どうでもいい刺激」と言い換えてもいいかもしれません。
パブロフの犬で例えるならば、ベルの音のことです。
何の学習も起きていない段階でベルを鳴らしても、犬は唾液を出しませんよね?
ただの音です。
条件刺激(Conditioned Stimulus: CS)って何?
これがポイントです!
条件刺激とは、中性刺激(NS)と無条件刺激(US)が繰り返し一緒に提示される(対提示される)ことによって、特定の反応を引き起こすようになった刺激のことです。
パブロフの犬で例えるならば…
ベルの音と肉を何度も一緒に提示した後、ベルの音を聞いただけで犬が唾液を出すようになったら、この「ベルの音」は条件刺激に変わったと言えます。
つまり
- 中性刺激(NS)は、学習(条件付け)が始まる前の「何も起こさない刺激」
- 条件刺激(CS)は、学習(条件付け)が成立した後の「特定の反応を引き起こすようになった刺激」
という関係性なんです。
中性刺激が条件付けの過程を経て「昇格」したものが条件刺激、とイメージすると分かりやすいかもしれませんね。
項目 | 中性刺激 (Neutral Stimulus: NS) | 条件刺激 (Conditioned Stimulus: CS) |
---|---|---|
定義 | 学習が始まる前、特定の反応を自然には引き起こさない刺激 | 中性刺激が無条件刺激との対提示によって、特定の反応(条件反応)を引き起こすようになった刺激 |
機能 | 特定の反応を引き起こす機能は持たない | 特定の反応(条件反応)を引き起こす機能を持つ |
存在時期 | レスポンデント条件付けの学習が始まる前に存在する | レスポンデント条件付けの学習が成立した後に存在する |
変化 | 無条件刺激との対提示を繰り返すことで、条件刺激へと変化する可能性がある | 元々は中性刺激だったものが、学習によって機能が変化したもの |
例(パブロフの犬) | ベルの音 (最初は唾液を出さない) | ベルの音 (学習後、ベルの音を聞くと唾液を出す) |
役割 | 条件づけの「材料」となる刺激 | 条件づけの「結果」として生じる刺激 |

「無条件刺激と条件刺激を対提示する」は間違いか?
さて、皆さんが混乱するポイントがここですね。
「レスポンデント条件づけの手続きは『無条件刺激と中性刺激を対提示する』と学んだのに、教科書には『無条件刺激と条件刺激を対提示する』って書いてある!これは間違いなの?」
結論から言うと、学習が始まる「手続き」そのものを説明するなら、「無条件刺激と中性刺激を対提示する」がより正確な表現です。
なぜなら、学習が始まる段階では、まだ「条件刺激(CS)」というものは存在しないからです。
中性刺激(NS)が無条件刺激(US)と対提示されることによって、初めて条件刺激(CS)へと変化していく…というのがこの学習プロセスの本質だからですね。
なぜ教科書に「無条件刺激と条件刺激を対提示する」と書いてあることがあるのか?
これは、いくつかの理由が考えられます。
1.最終的な関係性を指している
条件づけが成立した結果として、中性刺激が条件刺激となり、その条件刺激が無条件刺激と「対になった」状態(つまり、以前はUSとNSが対提示されていた関係性)で反応を引き起こす、という最終的な関係性を指している場合があります。
特に、条件付けが成立した後の現象(消去や自発的回復など)を説明する際に、CSとUSの関係に焦点を当てるために使われることがあります。
2.簡略化された表現
初学者向けの導入部分などで、厳密な手続きよりも「何を何と結びつけるか」という概念的な説明を優先するために、簡略化された表現として用いられることもあります。
3.USがCSの機能獲得に不可欠という強調
条件刺激が条件刺激として機能するためには、無条件刺激との連合が不可欠である、という点を強調する意図がある場合もあります。
まとめ:行動分析学マスターへの一歩
今回のポイントを整理しましょう。
- 中性刺激(NS):最初は何も引き起こさない刺激。
- 条件刺激(CS):中性刺激が無条件刺激との対提示によって反応を引き起こすようになった刺激。
- レスポンデント条件づけの「手続き」としては、「無条件刺激と中性刺激を対提示する」が正確。
- 教科書に「無条件刺激と条件刺激を対提示する」と書かれていても、それは学習が成立した後の関係性や、説明の簡略化であると理解しよう。
これで行動分析学の基礎用語に関する混乱は解消されたでしょうか?
専門用語は複雑に見えますが、一つ一つの意味を正しく理解していくことで行動分析学の奥深さに触れることができるはずです。
これからも一緒に楽しく学んでいきましょう!
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