こんにちは!ケンさんです!
今回は動物の行動を理解し、トレーニングを成功させるための最重要キーワードの一つ「マンド行動(Mand Behavior)」について解説します。

ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。
マンド行動とは?動物が「欲しい!」を伝えるサイン
マンド行動とは、動物が「欲しいもの(食べ物、注目、遊びなど)」を得るため、または「嫌なこと(爪切り、怖い刺激)」を避けるために、人間に向かって発するすべての行動やコミュニケーションのことです。
簡単に言えば、動物の要求や命令です。
マンド行動の基本構造
行動分析学では、マンド行動は特定の動機付け操作(MO: Motivating Operation)によって強化される言語行動と定義されます。
| 要素 | 説明 | 犬の例 |
| 動機付け操作(MO) | 動物が「何かを欲しがっている」状態 | お腹が空いている、散歩に行きたい |
| マンド行動 | 欲求を満たすために発する行動 | トレーナーのに向かって吠える |
| 強化子(結果) | 行動の結果、得られる「欲しいもの」 | ご飯がもらえる、ドアが開く |
動物が何か行動を起こしたとき、「その行動の目的は何だろう?」と考える習慣をつけましょう。すべての行動には、必ず何らかの目的(機能)があります。
危険!「望ましくないマンド行動」が生まれるメカニズム
飼い主さんやトレーナーが困る行動の多くは、実はこの「望ましくないマンド行動」です。
望ましくないマンド行動の例
〇注目要求
構ってほしくて飛びつく、吠え続ける。
〇食べ物要求
テーブルの下で鳴く、飼い主の手を鼻でつつく。
〇逃避要求
爪切り中に唸る、リードをつけるときに逃げる。
これらの行動が生まれる原因は単純です。
「その望ましくない行動によって、過去に要求が通ってしまったから」
例えば犬が吠え続けたとき、あなたが「うるさい!」と言って振り向いたり、おやつを与えて静かにさせようとしたりすると、犬は「吠えれば注目やおやつがもらえる」と学習してしまいます。
望ましくない行動も、動物にとっては非常に効率的なコミュニケーション手段として強化されてしまったのです。
トレーナーの技術:機能的コミュニケーション・トレーニング(FCT)
望ましくないマンド行動を改善するための最も強力で倫理的な手法が、機能的コミュニケーション・トレーニング (FCT) です。
FCTはDRA(代替行動分化強化)の応用で、密接に関連しています。最も正確に言えば、FCTは、問題行動の機能に基づいて代替行動を選び、それを分化強化(DRA)する、特定かつ強力な応用技術であると言えます。
これは、問題行動をただ叱るのではなく、その機能(目的)を満たすためのより良い手段(代替マンド行動)を動物に教えるアプローチです。
FCT実践の4ステップステップ
ここでは、犬が来客に対して興奮して飛びつき、これが望ましくないマンド行動になっているケースを考えます。
犬の飛びつきの目的は、多くの場合「注目(構ってほしい)」を得ることです。
①機能(目的)の特定
まず、問題行動が起こった直後に動物が何を得ているかを正確に特定します。
まずは犬の飛びつきを観察し、行動の直後に飼い主や訪問者が「やめて!」「コラ!」と声を出す、触って押し返す、または目を合わせていることを確認します。
このように観察をすることで、この犬の飛びつきは、「注目(Attention)」を得るためのマンド行動であると仮定することができます。
②望ましい代替マンド行動を選ぶ
飛びつくよりも簡単で、人にとって許容できる行動…
例えば「マットに伏せて待つ」や「静かにオスワリ」という行動を選択します。
この代替行動は、飛びつきと同じ機能(注目)を得るための、新しいコミュニケーション手段となります。
③代替マンド行動を徹底的に強化する
来客のインターホンが鳴るなどMOが高まったとき、犬が「オスワリ」をしたら、すぐに来客(または飼い主)が穏やかに声をかけたり、1秒だけ撫でたりして注目を与えます。
ポイントは、犬が新しいマンド行動(オスワリ)をしたら、過去に飛びつきで得ていた強化子(注目)を即座に、大量に与えます。
「オスワリの方が断然早く要求が通る!」と学習させるのです。
④望ましくない行動を「消去」する
犬が飛びつきを始めてしまったら、「来客はすぐに背を向ける」「目を合わせない」「声をかけない」などの工夫をして注目をゼロにしなけれなりません。
犬が床に足をつけ、落ち着くまでは無視を続けます。
このステップでは、望ましくない行動(飛びつき)への強化(注目)を完全に断ち切ります。
行動を無視し始めると、動物は「あれ?いつもと違うぞ。もっと頑張れば要求が通るかも!」と考え、一時的に吠えや飛びつきが激しくなる時期があります。
これを消去バーストと呼びます。ここで絶対に屈してはいけません!
ここで強化してしまうと、動物は「強くアピールすれば要求が通る」と学習し、問題がより深刻になります。
環境管理も忘れずに!
トレーニング中は望ましくない行動が起こる機会自体を減らすために環境を整えましょう。
例: 飛びつきを防ぐために「来客時は犬をリードにつないでおく」「夕食の準備中はクレートやサークルに入れておく」など。

まとめ
「マンド行動」の理解は、動物の心とつながるための鍵となります。
動物があなたに何を求めているのかを理解し、「不適切な要求」を「許容できるコミュニケーション」へと導いていくことこそが、トレーナーの役割です。
まずは、あなたの愛犬や愛猫が今、何を「マンド」しているのか、観察することから始めてみましょう!





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