「何度言ったらわかるの!」
「早くしなさいって言ってるでしょ!」
毎日、同じことでお子さんを叱り続けていませんか?
親も人間です。何度も同じことを言わされると、つい感情が爆発してしまいますよね。
でも、行動分析学の視点に立って見ると、お子さんが動かないのには「性格」や「やる気」ではなく、明確な「理由」があることがわかります。
今日は、根性論や精神論ではない、科学的なアプローチでお子さんが自ら動くようになるコツを、行動分析学の根幹である「三項随伴性」という視点からお伝えします。
ヒトや動物の行動の原因を解明し、行動に法則を見出すことを目的とした心理学のひとつ。
医療や介護、スポーツ、ビジネス、教育、家庭など様々な場面で応用されています。

ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。
「叱る」が逆効果になる科学的な理由
私たちがついやってしまう「叱る」という行為。
実はこれ、行動分析学で見ると、行動の「結果」として機能してしまっているケースが非常に多いのです。
ここで、行動を分析する基本のフレームワーク「三項随伴性(さんこうずいはんせい)」を見てみましょう。
A:先行条件(Antecedent) 行動の直前の環境。きっかけ。
B:行動(Behavior) 実際にとった行動。
C:結果(Consequence) 行動の直後に起きた変化。
この「A-B-C」のつながりを三項随伴性と呼びます。
「叱っても動かない」とき、多くの場合で「叱ること」そのものがお子さんにとっての「親の注目」という報酬(結果:C)になってしまっています。
これでは、三項随伴性の原理によって、叱れば叱るほど望まない行動が強まってしまうのです。
大切なのは、叱ってコントロールすることではなく、この三項随伴性をポジティブにデザインし直すことです。
ステップ1:指示を「物理的な先行条件(A)」に変える
「早くして」という言葉(A)は、子供にとっては曖昧で、他の刺激(テレビや遊び)に負けやすい不安定な刺激です。
言葉で連呼する代わりに、視覚的な環境を整えてみましょう。
- TODOリストを写真付きで貼る: 「着替える」「顔を洗う」を写真で見せる
- タイマーを活用する: 残り時間が赤色などで減っていく、視覚的に分かりやすいタイマーを使う
- 動線を整理する: 帰宅してすぐにランドセルを置ける場所に専用のフックを設置する
これだけで、親が口を出さなくても「あ、今はこれをする時間だ」とお子さんが気づく(Aが機能する)確率がぐんと上がります。
ステップ2:「できた瞬間」を逃さず強化(C)する
適切な先行条件(A)によって望ましい行動(B)が引き出されたら、次は「結果(C)」を整えます。
お子さんが少しでも動いた時、「当たり前」だと思ってスルーしていませんか?
行動の直後にポジティブな変化(報酬)が起きると、その行動は将来的に繰り返されるようになります。
この現象をを強化といいます。
- 実況中継する: 「お、パジャマを脱いだね!」「カバンを置けたね!」と声をかける。
- ハードルを下げる: 全部片付けられなくても、1個拾ったら「1個拾えたね!」と認める。
「完璧にできてから褒める」のではなく「三項随伴性を完成させる」イメージで、行動の直後にポジティブな反応を返してみてください。
まとめ:感情ではなく「仕組み」で解決する
お子さんの行動を「反抗的だ」と感情的に捉えてしまうと、どうしてもイライラしてしまいます。
しかし、一歩引いて「三項随伴性がどうなっているか(どんなAがあれば動けて、どんなCがあれば続けられるのか)」を観察してみるだけで、解決のヒントが見つかることが多々あります。
「叱る回数」を減らす工夫は、お子さんのためだけでなく、お父さん・お母さんの心の平和のためでもあります。
まずは今日、お子さんが「たまたま、当たり前にやっている良いこと」を1つ見つけて、三項随伴性の「C(結果)」として認める言葉をかけてあげることから始めてみませんか?
行動分析学をより深く学びたい方への3冊
今回の「三項随伴性」や「強化の原理」をもっと詳しく知りたい方におすすめの書籍です。
『行動分析学入門』杉山尚子ほか
基礎から体系的に学びたいならこの一冊。身近な例が多く、初心者でもスッと読み解けます。
『うまくやるための強化の原理』カレン・プライア
動物訓練から人間関係まで、「強化」の力をどう使えばいいかが具体的に示された名著です。
『行動分析学で社員のやる気を引き出す技術』舞田竜宣
家庭だけでなくビジネスの現場でどう応用するかを知りたい方に。マネジメントの視点が変わります。


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