スマートフォンを手に取ると、ついつい開いてしまうSNS。
気づけば何時間も「流し見」していた…なんて経験ありませんか?
面白い投稿を探してスクロールする指が止まらない!
でも、これってなぜなんでしょう?
実はこの現象、行動分析学を学ぶととてもよく理解できます。
今回は「SNSの流し見」がなぜ止められないのか、その裏に隠された「消去抵抗」というメカニズムについて、行動分析学を学び始めたばかりの皆さんにもわかりやすく解説します!
ヒトや動物の行動の原因を解明し、行動に法則を見出すことを目的とした心理学のひとつ。
医療や介護、スポーツ、ビジネス、教育、家庭など様々な場面で応用されています。

ケンさん(アニマルトレーナー)
アニマルトレーナー歴15年。
行動分析学を応用した近代トレーニングを実施しています。
「行動分析学は世界をより良くする」と信じ、日々発信しています。
SNSの「流し見」が止められないワケ:キーワードは「報酬」!
行動分析学では、ある行動をした後に「良いこと」が起きたり、「嫌なこと」がなくなったりすると、その行動が増えると考えます。
これを「強化」と呼びます。
強化 :行動の出現頻度が上がること
正の強化:行動の直後に良いことがあって、行動の出現頻度が上がること
負の強化:行動の直後に嫌なことが消え去ることで、行動の出現頻度が上がること
SNSの流し見も同じ原理。
あなたはスクロールするたびに、何か「良いこと」が起こると期待していませんか?
・面白い動画が見つかる
・友達の近況を知る
・共感できる投稿に出会う
・自分の投稿に「いいね」やコメントがつく
・新しい情報を発見する
・単純に暇つぶしになる
これらすべてが、SNSにおける「報酬」なんです。
私たちは、この報酬を求めて無意識のうちにスクロールを続けているわけですね。

ギャンブルと同じ!?「変動比率スケジュール」という強化のワナ
SNSの流し見が特に強力なのは、報酬が常に得られるわけではない、という点にあります。
面白い投稿はたまにしか流れてこないし、「いいね」がつくのも毎回ではありませんよね。
行動分析学では、このように「何回か行動したら報酬が得られるけど、いつ得られるかは決まっていない」という報酬の与え方を「変動比率スケジュール」と呼びます。
これ、実はギャンブルと同じ仕組みなんです!
スロットマシンを考えてみてください。
何回レバーを引けば当たるか分からないからこそ、「次こそは当たるかも!」という期待で、人はレバーを引き続けてしまいますよね?
SNSもまさにこれ。
次にスクロールしたら面白い投稿があるかもしれない!
誰かの「いいね」がつくかもしれない!
という期待感が、あなたのスクロールを止まらなくさせているのです。
なかなかやめられない行動の正体:それが「消去抵抗」!
さて、本日のメインテーマである「消去抵抗」についてです。
「消去」とは、ある行動の後に報酬が与えられなくなった結果、その行動が減っていくプロセスのことを言います。
例えば、皆さんがいつものように自動販売機でジュースを買おうとボタンを押しました。
でも、なぜかジュースが出てきません。
一回押して出てこなかったら諦めますか?
多くの人は、もう一度ボタンを押したり、お金を入れ直したり、軽く機械を叩いてみたりするのではないでしょうか?
これまで「ボタンを押せばジュースが出る」と強化されてきたからこそ、すぐに諦めずに別の手を試したり、しつこくボタンを押したりしてしまうのです。
これがまさに消去抵抗です。
消去抵抗が高いほど、その行動はなかなかやめられない、ということになります。

なぜSNSの流し見は「消去抵抗」が高いのか?
SNSの流し見がとてつもなく消去抵抗が高い行動である理由は、先ほどお伝えした「変動比率スケジュール」で強化されているためです。
「いつ報酬がもらえるか分からない」という経験
私たちは、SNSで「たまにしか報酬が得られない」という経験を何度もしています。
だから、たとえしばらく面白い投稿がなくても、「今はたまたま良くないだけ。もう少しスクロールすればきっと何かある!」と考えて、期待を捨てきれずにスクロールを続けてしまうのです。
報酬が完全にゼロになったとしても、「もしかしたら…」という希望が行動を維持させます。
完全な「報酬なし」の状態が少ない
また、SNSでは完全に「報酬がゼロ」になる状況はほとんどありません。
たとえ興味のない投稿が続いても、何かしらの情報自体は常に流れてきます。
この微々たる情報ですら、ある種の「弱い報酬」として機能し、行動の完全な消去を妨げている側面もあります。
だからこそSNSの流し見は一度ハマるとなかなかやめられない、というわけです。
これはあなたの意志が弱いのではなく、人間の行動原理に基づいた、非常に強いメカニズムが働いているからなんですね。
どうすれば「SNSの流し見」を減らせる?
この消去抵抗の仕組みを理解することで、対策も立てやすくなります。
報酬を完全に遮断する
一時的にSNSアプリを削除する、通知をオフにする、デジタルデトックスをするなど、意図的に報酬にアクセスできない状況を作り出します。
これにより、消去のプロセスを強制的に進めることができます。
行動のきっかけを減らす
スマートフォンを手の届かない場所に置く、スクリーンタイムを設定して利用時間を制限するなど、SNSを開いてしまう「きっかけ」自体を減らします。
代替行動を見つける
SNSを見る代わりに、読書をする、運動をする、友達と直接話すなど、満足感を得られる別の行動を見つけて、そちらを積極的に行うようにしましょう。
SNSは便利なツールですが、私たちの行動をコントロールする強力な力を持っていることも事実です。
行動分析学の視点から、自分の行動パターンを理解し、より良い付き合い方を見つけていきましょう!
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